進路の手引き(令和6年度版) 愛知県立岡崎盲学校 目次        1 はじめに 2 盲学校中学部卒業後の進路  3 障害者支援施設利用 4 進学 5 一般就労 6 理療業就労    7 居住の場 8 本校高等部卒業生の進路先 9 生活面における経済支援策 10 本校の進路指導関係行事 11 視覚支援のある校外模擬試験 12 各部段階の進路指導で大切にしたいこと 13 進路を考えるにあたり 14 福祉用語解説 15 おわりに   1 はじめに  本校は、幼稚部から高等部専攻科まで幅広い年齢層の幼児・児童・生徒が在籍し、その居住地は三河全域に及びます。また、卒業後における就労場所の広域さや進路先の多様さについても、盲学校である本校の特徴の一つになっています。それゆえ、視覚障害者の進路に関する情報は断片的で多岐にわたり、卒業後の進路を考えるにあたっては、「何をいつ調べればよいのか、またどのように行動すればよいのか分かりにくい」とお考えの方も多いと思います。そして調べる内容に関しても、特に障害者雇用や障害福祉関連の情報は専門的な用語が多く、公的機関が発信するホームページや広報誌などの読み取りにおいても基礎知識がないと難しいことがあります。  そこで、本手引きでは、視覚障害者の進路指導について少しでも分かりやすく、また具体的にお伝えしたいと考えています。  世界中を騒がせた新型コロナウイルスの猛威もようやく落ち着きをみせ、社会環境や経済活動は以前の姿に戻りつつあります。視覚障害者の進路に関してもよい兆しがみえてきています。こうした状況を鑑み、視覚障害者を取り巻く福祉や雇用の変化等についての情報の加筆を行い、新たに令和6年度版として[進路の手引き]を発行させていただくことになりました。皆さんの進路選択の一助となれば幸いです。 2 盲学校中学部卒業後の進路 ※ 盲学校における一般的な進路のフローチャート 盲学校中学部→盲学校高等部普通科、または盲学校高等部保健理療科 盲学校高等部普通科→進学(大学等)、または一般就労・障害者雇用(特例子会社を含む企業、公務員等)、または障害者支援施設利用(生活介護施設、就労移行支援施設、就労継続支援A型施設、就労継続支援B型施設、地域活動支援センター、自立活動訓練施設等)、または盲学校高等部保健理療科、または盲学校高等部専攻科理療科 盲学校高等部保健理療科→障害者支援施設利用(生活介護施設、就労移行支援施設、就労継続支援A型施設、就労継続支援B型施設、地域活動支援センター、自立活動訓練施設等)、または盲学校高等部専攻科理療科、または理療業就労(治療院、訪問マッサージ事業所、医療機関、高齢者介護施設、企業ヘルスキーパー、治療院開業等) 盲学校高等部専攻科理療科→障害者支援施設利用(生活介護施設、就労移行支援施設、就労継続支援A型施設、就労継続支援B型施設、地域活動支援センター、自立活動訓練施設等)、または進学(理療系大学、理療科教員養成施設等)、または理療業就労(治療院、訪問マッサージ事業所、医療機関、高齢者介護施設、企業ヘルスキーパー、治療院開業等) その他(在宅等) 3 障害者支援施設利用  障害福祉サービスは、“選ぶ”時代になりました。しかし視覚障害者の受け入れには慎重な事業所もあり、地域的には特定の福祉施設に希望者が集まる傾向もみられます。場合によっては卒業時に定員数の問題から第一希望として考えている施設の利用ができないケースも考えられます。そのため、各家庭において進路を意識した時期から、少しずつ個々の福祉施設の見学・体験をしたり、福祉事業所フェアなどの説明会に参加したりして、希望する事業所の選択肢を増やすなどの準備をしていただくことが大切になります。  以前は、感染症拡大防止の理由から、多くの福祉施設が見学や説明会等を中止していましたが、現在は外部受入れの取組を少しずつ再開する事業所も出てきています。また、このような状況下でも公費の助成等により新規開設する福祉事業所は数多くあります。今後の状況を注視しながら、個々に合った情報収集をお願いします。  18歳以上の障害者が利用できる主な通所系の福祉サービス 生活介護・・・入浴、排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作活動や生産活動を行います。多くの事業所が昼食の提供や送迎サービスを行っています。なお、生活介護の利用については、障害支援区分(※)3〜6の判定が必要になります。 ※障害支援区分については巻末で解説 就労移行支援・・・企業や就労継続A型施設等への就労を希望する人に、2年間以内の利用を基本として、就労に必要な知識と能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援を行います。また就職後における職場への定着支援や相談についても行います。 就労継続支援A型(雇用型)・・・適切な支援により継続的に就労することが可能な人が利用対象です。生産活動や理療、その他の就労に必要な知識を得るための勉強、また能力向上のために必要な訓練を行いながら、県の最低賃金が適用された雇用契約を結んで働きます。 就労継続支援B型(非雇用型)・・・企業やA型施設等の雇用に結びつかなかった人のうち、生産活動や知識の向上が期待される人が対象です。機能向上のための必要な訓練を行います。なお、新規学卒者については就労アセスメント(※)が必要になります。※就労アセスメントについては巻末で解説 地域活動支援センター・・・創作的活動や生産活動の機会の提供をして、社会との交流活動等を行っています。地域の実情に応じて、市町や事業所の創意工夫により柔軟な運用や、事業の実施をしていることが特色です。土曜日に運用している事業所も少なくありません。 自立訓練(機能訓練、生活訓練)・・・自立した日常生活や社会生活が送れるよう、身体障害をもつ方に身体機能の維持向上のためのリハビリテーション等を一定期間提供します(機能訓練)。また、知的、精神の障害をもつ方に、生活能力向上のための訓練や助言などの支援を一定期間提供します(生活訓練)。  個別の障害支援施設の概要については、独立行政法人福祉医療機構が運営するホームページ[WAM NET障害福祉サービス等情報検索]で確認することができます。【URL https://www.wam.go.jp/sfkohyoout】      4 進学  大学等への進学を希望する場合は、十分な目的意識をもって学校を検討する必要があります。大学を卒業して多くの資格を得たとしても、就職先が用意されているわけではありません。事前準備として、授業における支援体制や通学を含めた環境確認、また将来希望する仕事に就けるカリキュラムなのかを、オープンキャンパスに参加するなど十分に調べた上で進学先を選ぶことが大切になります。以下に、高等部普通科、保健理療科卒業以降の視覚障害者の主な進学先を紹介します。 一般大学・・・同朋大学や日本福祉大学などのAO(総合型選抜)入試や、障害者を対象とした入試を受験する生徒が中心になります。入学後の授業参加の方法、教科書の点訳体制、定期試験の実施方法、対応できる視覚支援機器、学内の移動など、視覚障害に関わる合理的配慮を確認したうえで大学・学部の選択を行います。 卒業後は一般企業や公務員等への就職を目指します。 筑波技術大学・・・茨城県つくば市にある、日本で唯一の視覚・聴覚障害者のための4年制大学です。一般の大学に比べて情報保障等の支援が充実しています。視覚障害者を対象とした保健科学部は、保健学科(しんきゅう学、理学療法学)と情報システム学科で構成されており、理療業や医療業、またIT関連会社等への就職を目指します。 本校高等部または他校高等部の専攻科、専修部・・・他校高等部には専攻科理療科の他に、3年課程のしんきゅう手技療法科、理学療法科、柔道整復科等があります。しんきゅう手技療法科は、本校の専攻科理療科と同様の教育内容です。理学療法科は、筑波大学付属視覚特別支援学校の専攻科にあります。柔道整復科は、大阪府立大阪南視覚支援学校の専修部にあります。 5 一般就労(障害者雇用)  障害に関わらず誰でも働くことが理想の社会ですが、企業の障害者雇用枠が拡大されたとはいえ現実には難しい状況があります。特に一般社会における視覚障害者の認識がまだ十分でない現在、求職活動をしない状況で、企業側から盲学校宛てに求人票(※)が届くことはありません。そのため、就職が可能だと考えられる企業を、個々の希望や意向に沿いながら職場開拓をする必要があります。障害者雇用においても、就職するためには業種別の資質が強く求められます。  障害者雇用の業種に関しては、特例子会社(※)を含め、製造業、清掃業、小売業を中心に様々であり、雇用形態としては嘱託社員や契約社員、パートタイム等の非正規雇用が多い状況です。  本校が就職の支援をする場合、ハローワークを通じた正式な障害者雇用を基本としており、健常者と同じく愛知県の最低賃金(令和6年4月現在、1時間:1,027円)が適用されます。ただし、就労後に労働能力が著しく低下した場合の最低賃金の減額特例など、例外的に最低賃金を下回るケースもあります。  民間企業の障害者法定雇用率(法律により義務付けられた障害のある雇用者の割合)が、2021年3月にそれまでの2.2%から2.3%に変更され、今後2026年度までに段階的に2.7%に引き上げる方針が厚生労働省より2023年1月に発表されました。そのような施策の影響もあり、近年は障害者雇用として、採用試験や実習などにチャレンジさせていただける企業が少しずつ増えています。  ※求人票、特例子会社については巻末で解説   6 理療業就労  あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師になるためには、医学的知識と専門的技術を習得し、国家試験に合格しなければなりません。高等部保健理療科では3年間で[あん摩マッサージ指圧師]の受験資格を、専攻科理療科では3年間で[あん摩マッサージ指圧師]、[はり師]、[きゅう師]の3つの受験資格を取得し、その後、国家試験に合格することで免許を取得することができます。(令和6年2月に実施された国家試験の全国合格率は、あん摩マッサージ指圧師84.0%、はり師69.3%、きゅう師70.2%)そして理療の免許を取得するための勉強と並行して、希望の進路先を探していきます。  理療業は、コロナ禍による負の影響が大きかった業種の一つですが、現在は訪問マッサージを中心に採用求人数が以前の状況に戻りつつあります。事業所側からは“施術力”に加え、これまで以上に“向上心”や“コミュニケーション力”の高い人材が求められています。就労先の選択については、雇用形態や通勤方法、健康状態を考慮しながら各々の条件に合った職場を、学校と一緒に考えていきます。    理療の免許を取得して勤めることのできる主な就労場所 治療院[マッサージ・はり・きゅう治療院、接骨院 等]・・・治療院内で、マッサージ・はり・きゅうの理療業務を行い、訪問マッサージを兼業する場合もあります。個人経営が多く、院長のもとに直接雇用されます。勤務形態は始業時刻が早く、終業時刻が遅く、午後の中休みを長く設けているところが多くあります。なお、接骨院以外のマッサージ・はり・きゅうのみの治療院は減少傾向にあります。 訪問マッサージ事業所・・・高齢者の住宅や高齢者を対象とした施設内で、主に医療保険が適用されるマッサージを行います。多くの場合、施術場所まで事業所の車で送迎されます。主に高齢者を対象とするため、あまり力を要しませんが、患者の骨折や怪我などを避けるリスク管理能力が求められます。近年はフランチャイズ展開する事業所が増え、需要も伸びています。 医療機関[整形外科病院、診療所 等]・・・医療機関内でのマッサージ施術が中心になります。医師や理学療法士の指示のもと、患者一人につき10分間程度の施術を一日、数十人に対して行います。入社後にセラピストの資格を求められる場合があります。理学療法士の数が増えていることで、医療機関においてのあん摩マッサージ指圧師の需要は減少傾向にあります。 高齢者介護施設・・・機能訓練指導員として、介護施設内のデイサービス等で施術を行います。デイサービス利用者に対する機能訓練やマッサージが中心になります。施設内には車いすの利用者も多く、衝突や転倒等にも気をつける必要があります。介護福祉士やケアマネージャーなどのスタッフと共に働きます。 企業(ヘルスキーパー)・・・一般企業専属の理療師として雇用され、事業所内のマッサージルームで従業員に対して一人につき30分〜50分間程度のマッサージ施術を行います。はり・きゅうを行う場合もありますが、多くはマッサージ施術のみに限定しています。就職希望者に比べ採用求人数は非常に少なく、また雇用形態はほとんどの場合、非正規雇用になります。 治療院開業・・・マッサージ・はり・きゅうの治療院を経営します。施術技能の他、経営者としてのスキルが必要になります。近年は視覚に障害のない方の開業も増えてきていることに加え、フランチャイズ展開する大型リラクゼーション施設の急伸、また医療保険が適用されない場合の治療費負担増などの理由から、患者の確保に十分な工夫が必要になります。  7 居住の場  高等部卒業後は保護者や家族のもとで、しばらく自宅で生活することが多いですが、夜間における支援を求める方や、サポートを受けながら自立のための準備にチャレンジする方もいます。以下に、主な入所系の障害福祉サービスを紹介します。 グループホーム(共同生活援助)・・・生活や健康管理面でのサポートを受けながら、共同生活を営みます。支援度の高い方について24時間体制で支援を行う事業所も少しずつ増えています。 入所支援・・・日中活動と夜間生活に関わる支援を一体的に併せて行います。ただし、現在は利用者の定員数を減らす既存の事業所が増え、新規開設も少ない状況です。 福祉ホーム・・・低額な料金で居室やその他の設備が利用でき、日常生活に必要な支援を行います。居室は原則として個室となります。 宿泊型自立訓練・・・家事等の生活能力を向上させるための支援、また生活等に関する相談と助言等の支援を行います。利用期間は2年以内を基本とします。  8 本校高等部卒修生の進路先(過去11年間) (1)高等部 普通科 一般就労 (企業、公務員等)・・・R3に1名 進学 (一般大学)・・・H28に1名、H29に1名、R2に1名、R5に1名 (本校高等部保健理療科)・・・H25に1名、H30に2名 (本校高等部専攻科理療科)・・・H26に1名、H27に1名、H30に1名、R2に1名 (他校高等部専攻科保健理療科)・・・H29に1名 (他校高等部専攻科普通科)・・・H28に1名 (専門学校、その他の教育機関)・・・R4に1名、R5に1名 障害者支援施設 (生活介護)・・・H26に1名、H28に1名、H30に1名、R2に1名、R3に2名、R4に3名 (生活介護+就労継続支援B型)・・・R1に1名 (就労移行支援)・・・R3に1名 (就労継続支援A型)・・・R3に1名、R5に1名 (就労継続支援B型)・・・H26に1名、H27に1名、R4に1名 (入所支援)・・・H25に1名、H28に2名 その他(在宅)・・・R4に1名 (2)高等部 保健理療科 理療業就労 (治療院、訪問マッサージを含む)・・・H26に1名 (医療機関)・・・R4に1名 進学 (本校高等部専攻科理療科)・・・H29に1名 (他校高等部専攻科保健理療科)・・・R3に1名 その他 (在宅、国家試験準備等)・・・H25に3名、H26に1名、H27に2名、H28に1名、R1に2名、R3に1名 (3)高等部 専攻科理療科 理療業就労 (治療院、訪問マッサージを含む)・・・H25に1名、H26に2名、H27に1名、R4に1名 (医療機関)・・・H27に1名 (高齢者介護施設)・・・H25に1名、H30に1名、R3に1名、R5に2名 (企業、ヘルスキーパー)・・・H28に1名、H29に2名、R1に1名、R3に1名 (治療院開業、開業準備を含む)・・・H28に1名、R1に1名、 障害者支援施設 (就労継続支援A型)・・・R2に1名、R3に1名 (就労継続支援B型)・・・H26に1名、H30に1名 その他 (在宅、国家試験受験準備等)・・・H25に2名、H28に4名、H30に1名、R2に1名 9 生活面における経済支援策  障害児・者の社会保障制度については、国、地方自治体、その他関係機関により、さまざまな費用の助成や給付制度があります。以下に障害児・者に対する主な経済支援策を紹介します(独自の制度を有する自治体もあり、制度の名称や助成対象者についても異なる場合があります。詳しくは居住地の福祉課にお尋ねください)  将来の生活を考えるうえで、金銭面に関する支援の把握も大切になります。なお多くの場合、障害の程度や所得の状況等により助成に制限が設けられています。 (1)障害福祉サービス利用のための助成  [障害福祉サービス受給者証]を取得することにより、サービス利用料が一割のみの負担になります。また応能負担として、下表のとおり、サービス利用者の年齢と世帯の所得に応じた月額の負担上限額が設定され、残りの利用料は公的な補助により賄われます。(世帯収入額の目安については、条件により異なる場合があります) 18歳未満の場合  保護者の属する世帯収入が概ね年間300万円以下の方の月額負担上限額は、0円 保護者の属する世帯収入が概ね年間890万円以下の方の月額負担上限額は、4,600円(入所施設利用児については、9,300円) 上記以外の方の月額負担上限額は、37,200円 18歳以上の場合 障害者本人とその配偶者の世帯収入が概ね年間300万円以下の方の月額負担上限額は、0円 障害者本人とその配偶者の世帯収入が概ね年間600万円以下の方の月額負担上限額は、9,300円(グループホーム、入所施設利用者については、37,200円) 上記以外の方の月額負担上限額は、37,200円 (2)障害年金  障害基礎年金と障害厚生年金の2種類があります。障害基礎年金は、国民年金加入者が障害を負った場合について、また20歳になる前に障害を負った場合について、いずれも20歳を過ぎてから受給できる年金です。なお、職場等における厚生年金加入者の場合は、障害基礎年金に加えて障害厚生年金の上乗せ支給があります。障害基礎年金の等級は1級(月額約82,810円)と2級(月額約66,250円)があり、障害程度や生活状況により受給可否を含めて判定されます。 (3)特別児童扶養手当  身体や精神、知的に中度以上の障害(診断書等により判断)のある20歳未満の児童の保護者に対して支給されます。支給月額は障害の程度により、1級:55,350円、2級:36,860円です。 (4)障害児福祉手当(愛知県障害児福祉手当分を含む)  重度の障害(診断書等により判断)のため、日常生活において特別な介護を必要とする20歳未満の障害児に支給されます。支給月額は障害の程度により、A種:22,120円、B種:16,370円、C種:15,220円です。 (5)特別障害者手当(愛知県特別障害者手当分を含む)  重度の障害(診断書等により判断)のため、日常生活において特別な介護を必要とする20歳以上の障害者に支給されます。支給月額は障害の程度により、A種:34,830円、B種:29,030円、C種:27,980円です。 (6)税金の控除、及び免除 地方税 ・住民税控除。ただし、一定の所得を下回る場合(前年所得135万円以下)は住民税免除。 ・自動車税の減免。 ・特別障害者(※)の同居人に対する住民税控除。…等 ※障害者手帳所持者のうち、身体障害者手帳1級または2級の方、精神障害者保健福祉手帳1級の方、重度の知的障害者と判定された方など、特に支援度の高い障害のある方を指します。 国税 ・所得税控除。 ・特別障害者に対する贈与税免除。 ・相続税控除。 ・身体障害者用物品に対する消費税非課税。  ・特別障害者の同居人に対する所得税控除。 …等 (7)障害者医療費助成 以下の何れかの条件の方について、保険診療による医療費の自己負担分が全額助成されます。 ・身体障害者手帳1級〜3級と判定された方 ・療育手帳A判定、またはB判定の方 ・自閉症状群と診断された方 ・精神障害者保健福祉手帳1級、または2級と判定された方 …等 (8)自立支援医療(育成医療・更生医療)給付 育成医療:18歳未満の身体上の障害のある児童が、生活能力を得るために必要となる医療の費用が保護者世帯の所得に応じて助成されます。 更生医療:18歳以上の身体上の障害のある方が、身体機能の回復を図るために必要となる医療の費用が所得に応じて助成されます。 (9)日常生活用具費の給付  以下のような障害児・者の日常生活上の便宜を図るための用具について、障害等級などに応じて購入費用が助成されます。 子式歩行補助具、情報通信支援用具、点字タイプライター、視覚障害者用拡大読書器、視覚障害者用ポータブルレコーダー、居宅生活動作補助用具(住宅改修費) …等  (10)特別障害給付金  過去、国民年金制度の移行過程において国民年金に任意加入していなかったことにより、障害基礎年金を受給することができない障害者が、一定の要件に該当する場合に給付金が支給されます。支給月額は障害の程度により、53,650円または42,920円です。 (11)生活保護  社会保障制度の活用、保有する預貯金、親族等の援助など、あらゆる資産を活用したうえで、それでも生活に困窮している場合にその不足分を補う制度になります。生活がより困難となることが推測される障害者の場合は、条件により障害者加算費が付与されます。なお、支給される保護費は、居住する地域や世帯の状況によって異なります。 (12)その他、日常生活における料金割引、補助  グループホーム家賃、鉄道・バス・タクシー・航空運賃、有料道路通行料、携帯電話契約料、NHK放送受信料、映画館・動物園・水族館・テーマパーク入場料等の障害者料金割引制度があります。また居住自治体によっては公営住宅家賃、水道料金、タクシーチケット等の補助制度があります。 10 本校の進路指導関係行事  (1)年間行事予定表 幼・小学部 4月:進路希望調査(幼稚部は実施しない) 7月:夏季事業所見学会 9月:ふれあい発見推進事業(6年) 随時:進路相談(希望者) 中学部 4月:オリエンテーション(進路指導)、進路希望調査、進路を考える週間 7月:夏季事業所見学会 9月:チャレンジ体験推進事業(3年) 随時:進路相談(全家庭) 高等部普通科 4月:オリエンテーション(進路指導)、進路希望調査 6月:前期産業現場等における実習(C、D類型の2、3年) 7月:夏季事業所見学会 9月:進路講演会(他学部や保護者の参加も可)、職業相談会(3年の就職希望者) 12月:後期産業現場等における実習(C、D類型の1〜3年) 随時:産業現場等における実習(必要に応じて、A、B類型の1〜3年)、進路相談(全家庭) 高等部保健理療科・専攻科理療科 4月:オリエンテーション(進路指導)、進路希望調査 5月:就労先見学[訪問マッサージ事業所](2年) 6月:就労先見学[治療院・企業ヘルスキーパー](2年)、校外実習[一般事業所](3年) 7月:第1回模擬国家試験(3年)、校外実習[一般事業所](3年)、夏季事業所見学会 9月:就労先見学[高齢者介護施設](2年)、校外実習[高齢者介護施設](3年)、職業相談会(3年の就職希望者) 11月:校外実習[高齢者介護施設](3年)、第2回模擬国家試験(3年) 1月:第3回模擬国家試験(3年)、就労先見学[治療院](専攻科理療科1年) 2月:あん摩マッサージ指圧師国家試験(保健理療科3年)、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師 国家試験(専攻科理療科3年) 3月:第4回模擬国家試験(2年) 随時:産業現場等における実習(必要に応じて実施)、理療臨床実習(保健理療科3年)、理療臨床実習(専攻科理療科2、3年)、進路相談(全家庭) (2)各行事の内容 進路希望調査・・・本人・保護者の進路希望や、進路に関する考えを学校が把握するとともに、進路に関する情報提供希望の有無を確認し、必要に応じて個々の希望進路に関わる情報を提供します。対象者:小、中、高、保護者 夏季事業所見学会・・・主に視覚障害者の活動を支援する施設や障害者雇用を積極的に行っている企業などを見学し、進路選択の参考としていただきます。幼児・児童・生徒が参加する場合は、保護者同伴とします。対象者:幼、小、中、高、保護者 進路相談・・・中・高等部の御家庭については全員を対象に実施します。幼・小学部については、年度初めに進路相談の希望を確認しますが、進路に関する質問や困ったことがあれば、随時受け付けます。対象者:幼、小、中、高、保護者 ふれあい発見推進事業・・・視覚障害のある方が働く職場や、一般企業で働く方の見学、また仕事の疑似体験などを通して、身の回りの仕事に興味をもち、働くことへの意識を高める機会とします。対象者:小学部6年 チャレンジ体験推進事業・・・商業施設の仕事や福祉事業所の体験などを通し、生徒の実態に応じて、働くことの意義や卒業後の過ごし方への見通しがもてるように学習します。対象者:中学部3年 進路を考える週間・・・自分の興味がある仕事について調べたり、キャリア教育ノートを使って将来の目標を決めたりするなど、進路に向かい合う機会として、勤労観や職業観を育てます。対象者:中学部 オリエンテーション(進路指導)・・・年度初めに、中学部、高等部別に行います。それぞれの段階に応じた進路実現に向けての心構えや、進路希望調査の書き方などの話を聞きます。対象者:中学部、高等部 産業現場等における実習・・・校外での実習を通して、進路希望を実現するための課題を把握し、進路選択や進路決定に生かす機会とします。実習期間は3〜5日間を基本とします。対象者:高等部普通科 進路講演会・・・勤労観や職業観を養うため、盲学校の卒業生や理療科教員、また企業や施設の人事担当者を招き、仕事や進路に関する講話を聞きます。希望により他学部生の参加も可能です。対象者:高等部普通科、保護者 職業相談会・・・就労継続支援A型を含む就職希望者が、ハローワークの担当者と校内で面談し、相談の上、事業所の求人に応募するための求職登録を行います。対象者:高等部3年の就職希望者 就労先見学・・・高齢者介護施設、治療院、訪問マッサージ事業所などの職場を見学し、各仕事の経営や実情を理解します。また、理療施術を見学しながら、心構えや技能を学びます。対象者:高等部理療科 校外実習・・・近隣の高齢者介護施設や公共施設、一般企業等を訪問し、理療施術を行います。技術と知識の向上を図りながら、進路の選択を考えていきます。対象者:高等部理療科 理療臨床実習・・・理療施術を適切に行う能力と態度を育てることを目的に、校内臨床室において、外来患者に対して理療施術を行います。進路決定のために就職希望先で行うこともあります。対象者:高等部理療科 11 視覚支援のある校外模擬試験  下表は、大学進学を目指す高等部生徒が受験できる視覚支援(点字・拡大対応)のある校外模擬試験の一覧です。受験母体の大きな模擬試験は、盲学校という少人数校では分かりにくい相対的な自分の学力を受験生全体の中で確認することができます。 模擬試験を希望する場合は、学級担任、進路指導部と相談の上、生徒・保護者が受験科目等を選択し、各家庭において授業のない休日に実施します。(受験料は、1つの模擬試験で3,000〜4,200円程度) (1)高等部普通科1年 記述式模試(科目選択) 7月 [ベネッセ]総合学力テスト 11月 [ベネッセ]総合学力テスト 1月 [ベネッセ]総合学力テスト 論文模試 4月〜8月 [ベネッセ]第1回論述テスト  9月〜3月 [ベネッセ]第2回論述テスト  (2)高等部普通科2年 記述式模試(科目選択) 6月 [ベネッセ]西三テスト 11月 [ベネッセ]総合学力テスト 1月 [ベネッセ]西三テスト マーク式模試(5科目) 2月 [ベネッセ]大学入学共通テスト模試 論文模試 4月〜8月 [ベネッセ]第1回論述テスト  9月〜3月 [ベネッセ]第2回論述テスト  1月〜3月 [ベネッセ]第1回基礎小論文テスト (3)高等部普通科3年 記述式模試(科目選択) 4月 [ベネッセ]総合学力記述模試 6月 [ベネッセ]西三テスト 9月 [河合塾]全統記述模試 10月 [駿台・ベネッセ]記述模試 マーク式模試(5科目) 5月 [ベネッセ]西三テスト 7月 [河合塾]全統共通テスト模試 9月 [駿台・ベネッセ]大学入学共通テスト模試 11月 [駿台・ベネッセ]大学入学共通テスト模試 論文模試 4月〜 5月 [ベネッセ]第1回基礎小論文テスト 6月〜10月 [ベネッセ]第2回基礎小論文テスト  視覚障がい者の受験配慮として、大学入試センターが実施する[大学入学共通テスト]では、点字解答者には1.5倍、文字解答者には1.3倍の試験時間の延長を設けています。これを基準として視覚障害者を受け入れている各大学は障害程度により時間延長を認めています。模擬試験についても概ね、この基準で実施します。  なお、中学部生徒を対象とした点字対応の校外模擬試験は実施されていないため、受験を希望する場合は外部ボランティア団体等に点訳を依頼し、類似した点字問題を制作したうえで通常の2〜3か月後に実施します。 12 各部段階の進路指導で大切にしたいこと  盲学校の各部では、幼児・児童・生徒一人一人の可能性を最大限に伸ばしながら、自立と社会参加を目指す進路指導(キャリア教育)を発達段階に応じて行っています。  個々の進路や目標は異なりますが、卒業・修了に向けて、学校と保護者、関係機関が連携して日々の支援にあたることに変わりはありません。学校の授業だけではなく、日常生活での活動も進路指導につながるという意識をもち、できることを丁寧に積み上げていきましょう。  下表では、幼児・児童・生徒と保護者向けに、各部段階の進路指導で大切にしたいことをまとめました。御家庭でも、これらのことを意識して進路指導をお願いします。   (1)幼稚部、小学部 幼児・児童 ・あいさつ、返事をする。 ・身辺処理能力を高める。 ・友だちと仲よく安全に遊ぶ。 ・日常生活に必要なきまりを守る。 ・係や手伝い等の活動に意欲的に取り組む。 ・休まずに登校する。 保護者 ・規則正しいリズムで家庭生活が送れるように支援する。 ・地域にある障害者支援施設の見学、利用をする。 ・授業公開日等で、中学部・高等部(理療科を含む)の授業を見学する。 (2)中学部 生徒 ・あいさつを自分から行う。 ・コミュニケーション能力を高める。 ・働く力(意欲、持続力、体力等)を養う。 ・時間を意識して行動する。 ・進路に対する意識をもつ。 ・身だしなみに気を付ける。 保護者 ・進路相談、学級懇談等により、進路の方向性を考える。 ・日常生活上の活動において、自分自身でできることが増えるように支援する。 ・授業公開日等で、高等部(理療科を含む)の授業を見学する。 (3)高等部普通科 生徒 ・場に応じたあいさつを自分から行う。 ・良好な対人スキルを身につける。 ・働く力(意欲、持続力、体力等)を高める。 ・公共交通機関利用の練習をする。 ・事業所見学等を行い、進路希望先を決める。 ・充実した生活のための余暇活動を見つける。 保護者 ・適切な進路先を選択するため、事業所を見学するなどして情報収集をする。 ・個々の生徒なりの自立に向け、家庭以外の社会経験を増やす。 ・卒業後の生活を見据え、地域の相談支援事業所を活用する。 (4)高等部理療科 生徒 ・日々の授業の予習・復習を行い、施術や学習の知識を確実に習得する。 ・理療現場で求められるコミュニケーションスキル(患者との会話、電話対応等)を身につける。 ・就職活動として事業所訪問を行うなど、積極的な情報収集に努める。 ・公共交通機関を一人で安全に利用する。 ・必要に応じて外部機関の講習会等に参加して施術の技術を高める。 ・障害や年齢に応じた体調管理に気を配る。 ・視覚障害を補うための支援器具を活用し、コンピュータ関連機器(パソコン、タブレット等)の操作や文書作成をする。 13 進路を考えるにあたり  卒業後すぐにかなえたい希望もあれば、将来的な夢もあると思います。まずは卒業後の生活について家族と相談しながら自分の希望を考えていきましょう。  就職を希望する方については、一般企業や理療業に関わらず、自分が就きたい職業は最終的に自分自身で選ばなければいけません。そのためには、自分の“得意なこと”や“したいこと”を見つけることが必要になります。また弱点となる課題を克服しようとする気持ちや、長所を更に伸ばしていこうとする向上心も大切になります。  就職の採用基準については、それぞれの業種が必要とする能力の他、コミュニケーションについても重視する傾向が強くなっています。挨拶、返事、報告、連絡、相談等が適切に行えることと、素直で真面目な人柄が求められています。  また、たとえ就職先が決まったとしても、一人で問題なく通勤することができなければ困ります。机上の学習だけではなく、公共交通機関を正しく利用し、公道を安全に移動できることが必要になります。また、公共マナーが守れることも社会人として大切です。盲学校卒業の直前ではなく、幼少の頃から生活面においても段階的に練習や学習を進めていくことが希望の進路実現につながっていきます。  障害支援施設の利用をお考えの保護者の方で、「家庭で何から始めればよいのか分からない」という場合は、まずは福祉サービス内容を確認の上、自宅近くの福祉施設の見学を勧めます。そして、お子さんの実態に合った内容かどうかを判断しながら複数の施設見学や体験を進めることによって、行きたい場所や行かせたい場所、そして将来の目標が少しずつ見えてくると思います。また、福祉施設を比較・検討する場合は、地域の相談支援事業所に登録し、相談支援専門員(※)から見た現場の意見や情報を得ることも一つの方法です。 ※相談支援専門員については巻末で解説  なお、福祉的就労における工賃(賃金)について、愛知県における平均額(県のホームページで公開されているものに限る)は以下のとおりです。  ・就労継続支援A型施設----------平均84,031円(月額)  ・就労継続支援B型施設----------平均18,174円(月額)  生活介護や就労移行支援などの福祉サービスは、個々の施設、活動内容によって工賃に大きな差が出ていますので、それぞれの当該事業所でご確認ください。  工賃は就労意欲の大きなモチベーションになります。しかし、大切なことは工賃の額だけではなく、自分の居場所をしっかり見つけ、生きがいをもって日々の生活を送ることだと思います。活動内容や就労環境等、本人に合った進路先を選択することが重要になります。  居住の場として、グループホームや福祉ホーム等の利用を希望する場合については、既存施設の多くはすでに定員を満たしており、希望者が待機している事業所も少なくない状況です。しかし、地域に利用を望んでいる方がいれば、近年の愛知県の共同生活援助における積極的な施策により、福祉事業所が新たなグループホームを新設する可能性があります。将来、利用を検討している場合は、当該施設や相談支援専門員などに早めに相談し、ニーズを伝えていきましょう。   14 福祉用語解説 障害支援区分・・・障害の特性や心身の状態に応じて支援の度合いを表す6段階の区分です。必要とされる支援に応じて適切なサービスが利用できるように導入されました。生活介護、入所支援、短期入所、グループホームなどに適用されます。 就労アセスメント・・・学校を卒業後、すぐに就労継続支援B型の利用を希望する方については、在学中に就労移行支援施設にて1〜2週間程度の期間でこれを行う必要があります。就労継続支援B型を利用する上での外部評価となります。 求人票・・・雇用を予定している事業所が募集概要や労働条件を記載する求人書類です。障害者雇用については、ハローワークで一般に広く開示している公開求人以外に、実習等を経た学校在籍者を対象とする非公開の指名求人があります。 特例子会社・・・親会社が障害者従業員のための特別な配慮で設置した子会社のことを指します。障害者法定雇用率において、その子会社で雇用されている障害者を、特例的に親会社で雇用しているものとして算定できます。 相談支援専門員・・・相談支援事業所に属し、障害者やその家族が必要とする福祉サービスを適切に受けるためのサポートをします。[サービス等利用計画]の作成も行うなど、利用者と福祉事業所をつなぎ、中立的な立場で支援に携わります。 サービス等利用計画・・・障害福祉サービスを利用する方を支援するための総合的な支援計画です。福祉施設利用の際に必要になります。家族や支援者が作成するセルフプランもありますが、多くは相談支援事業所に依頼しています。 日常生活自立支援事業・・・判断能力が不十分な方が、暮らしの中で不安や疑問に思うことが生じた場合の相談や日々の金銭サポート、福祉サービスの利用援助等を行い、安心して暮らせるように支援する事業です。実施主体は社会福祉協議会です。 成年後見制度・・・日常生活自立支援事業と同じく、判断能力が十分ではない方を保護するための制度です。不動産や預貯金等の財産を本人の代わりに管理したり、日常生活上で必要な契約を代理人として結んだりする支援を行います。 15 おわりに  進路指導とは学校だけで行う特別な指導ではなく、それぞれの年齢や発達段階に応じて日常のあらゆる場面で行い、個々のもつ能力を十分に発揮することで将来の可能性を広げるものであると考えます。  そして障害に対する一つ一つの支援と同じように、進路に関する情報収集などの支援もとても大切になります。この[進路の手引き]の内容についても、雇用や福祉に関する情報をすべて網羅しているわけではありません。各市町により障害福祉の施策が異なる場合もあり、雇用制度も年々複雑に変わっています。そして今後、進路を具体的に考えるにあたり、例えば障害基礎年金をはじめとした公的な経済支援の確認や、相談支援事業所の選び方、また日常生活自立支援事業や、将来的な成年後見制度の活用など、ご家庭で様々なことについて検討することもあるかと思います。それらにつきましても、疑問に思うことや不安に思うことが少しでもありましたら、担任を通じて進路指導部までお問い合わせ下さい。  幼・小学部、中学部、高等部のそれぞれの段階において、来たるべき巣立ちの時に向け、今できること、そしてこれからするべきことを学校と一緒に考えていきましょう。